現代英語の文法を探求する

英語学とその隣接領域に関する見解を個人の立場で記述しています。

グラフから見える新型コロナウイルス第三波の拡大状況(1)

  1. はじめに

 安心して仕事と生活ができる日常に一日でも早く戻ることを希求して,緊張感をもって感染対策に取り組んでいるにも関わらず,状況は一向に改善する兆しが見えません。なぜなのでしょうか? そもそも,私たちは今どのような状況に置かれているのでしょうか?

 分科会,医師会,感染症学会が頼りにならないのであれば,答えを自分たちで探すしかありません。

 Yahoo! Japan が「新型コロナウイルス感染症まとめ」で,新規感染者数を日別で表したグラフを提供しているので,このグラフを基に考えてみたいと思います。

 

  1. 第三波には3つの山がある-1217日が分岐点

  グラフを見ると,新規感染者数の発生に関して,伸びが顕著な「(水)木金土」,と伸びの底に当たる「月」の2つに分類できます。前者のデータから近似できるカーブを「高い山」,後者のデータから近似できるカーブを「低い山」と呼ぶことにします。

  高い山に着目すると,第三波には,3つの山があります。順に,第三波A,第三波B,第三波Cとします。

  直近の第三波Cの発生状況は,グラフから次のように予測できます(注1)。

 

(1) 第三波Cの発生状況の予測 (12月28日時点)

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  12月16日~12月19日の4日間は,土曜日に伸びの頂点が現れていないので,外側の12月16日・17日を通過する緩やかなカーブと,内側の12月18日・19日を通過する比較的急なカーブの2つで近似しています。近似に選んだ放物線はy=-ax2のタイプです。前者のカーブはa=9/25 ,後者のカーブはa=12/25 です。

  Go To トラベルの一時停止が大きく話題に上るようになったのは12月11日です(例えば,Go Toトラベル「ステージ3の一部で一時停止を」コロナ分科会が提言」(TOKYO Web. 12月11日)を参照のこと)。12月11日の新規感染者数が2,795人なので,これより少ない数で切りのいい数字を選ぶと,2,500人がGo To トラベル再開の一つの目安になるでしょう(注2)。

  予測通りに状況が展開すると仮定して,この水準に達するのは,2021年1月30日です。また,Go To トラベルと感染拡大との因果関係は科学的に証明されていませんが,この関係を推認する社会的風潮があることも忘れてはいけません。

  「先手」で考えるというのであれば,Go To トラベルの再開は東京オリンピック後に延期し,まずは,感染拡大のepicenterになっている東京の鎮火に「全集中」すべきでしょう。

  実は,東京の新規感染者数が882人になった12月17日(総数3,210人)が分岐点で,12月23日までに限って見れば,仮想上のピークが12月22日に現れ,2021年1月9日頃までに(少なくとも)2,500人まで下がる最後の機会でした。

 

(2)

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  全国平均の2倍以上の感染状況が続く東京の「動揺」を,日本が一つの系(a system)として何とか吸収しようと最後の頑張りを見せていた時期と言うこともできるでしょう。

  第三波Cの存在が顕在化するのは12月24日(3,739人)です。この時初めて,12月17日が異常値であることに気づかされます。しかし,新しい波の存在はすぐに3点以上を通過するカーブで近似し直すことができるのですが,12月24日の時点では,12月17日と12月24日の2点しかないという点でも異常な局面を迎えていました。

  ここで,12月24日を例に取り,発生状況を確認してみましょう。便宜的に,人口の多い上位8つの都道府県から兵庫県を除く7つを選ぶことにします。

  東京,神奈川,埼玉,千葉の一都三県が全人口に占める割合(A)は28.3%ですが,新規感染者総数に占める発生比(B)が50.0%(1,868人)で, 前者で後者を割ったB/A値は1.8です。東京に限って言えば,B/A値は2.2です(注3)。

 

(3)

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 時間が多少前後して,3日前の12月21日の発生状況に戻りますが,視覚に訴える日テレNEWS 24の報道は,さらに説得力があるでしょう(「赤で囲み表示」は筆者による)。

 

(4)

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                (「全国で1804人の感染確認 死者は48人」日テレNEWS 24. 12月22日 (注4))

 

  これを見ると,東京が震源地で,神奈川,埼玉,千葉が防波堤として頑張っていることが分かります。交通機関が現在のように発達していない江戸時代以前であれば,感染はこの一都三県の局地的なものであったかもしれません。

  東京オリンピックを軸に考えれば,訪日客が安心・安全に東京で開催されるオリンピックを楽しむことができるように準備を整えることが何よりの「おもてなし」であり,そこで信頼を獲得できれば,観光立国としての再出発も円滑に進むことでしょう。詰まるところ,経済の立て直しにも有効につながるでしょう。

  そのためには,東京を居住地または勤務地とする人々にワクチンの接種を優先することが考えられますが,それ以上に,さらに感染力の強い変異株が生まれる芽を徹底的に摘むことが重要な鍵になるでしょう。こう考えた場合,東京に居住する人々に,昼間に東京に流入する隣県三県の学生・勤労者を対象に,PCR検査を徹底的に実施すべきだと思います。一日100万人を対象に,2週間程度の期間で,対象者のPCR検査を少なくとも2回実施し,無症状感染者の「クラスター」の可能性を示す地域または職場/職種を洗い出し,次に,特定の対象に絞って,さらに複数回PCR検査を実施するのです。

  早期の治療開始により重症化を防ぎ,後遺症を軽減するという副次的効果も期待できますが,何よりも,第四波の発出を防ぐことが目的です。人間の体内で生存する限りにおいて,変異が可能であるのであれば,有症者は治療により,変異の芽は摘まれます。残る課題として,これまで軽視されてきた無症状者をターゲットに感染力を増す変異の芽を徹底的に摘むのです。

 ことわざに,A chain is no stronger than its weakest link.とあるように,東京の中の潜在的なweakest linkを取り除くことこそが,新型コロナウイルスとの戦いに勝利を収める真の意味での「先手」となるはずです。

 

  1. 放物線の作成には,WinCATS放物線学習ツールを,画像の重ね合わせには,WEBブラウザ上で簡単に透過PNG画像を作成できるツールを利用している。ツールの作成者には,この場を借りて御礼申し上げます。
  2. 分科会が「観光支援策「Go To トラベル」キャンペーンでは、感染拡大地域から出発する旅行についても一時停止を検討するよう要請した(「感染拡大地域との往来自粛 尾身会長、東京23区「ステージ3」相当―コロナ分科会」JIJI. COM. 2020年11月26日)日の新規感染者数が2,500人です。
  3. 人口比は,2015年時点。ウィキペディア都道府県の人口一覧」を参照している。
  4. 12月21日の一都三県の発生比は45.1% (814人),B/A値が1.6である。東京は,発生比が21.2%,B/A値が2.0である(新規感染者数は日テレの発表に基づく)。