現代英語の文法を探求する

英語学とその隣接領域に関する見解を個人の立場で記述しています。

グラフから見える新型コロナウイルス第三波の拡大状況(2)

  1. はじめに

 まず,2020年12月31日の発生状況を確認しておきましょう。

 

(1)

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 一都三県(東京,神奈川,埼玉,千葉)が全人口に占める割合(A)は28.3%ですが,新規感染者総数に占める発生比(B)が55.5%(2,507人)で, B/A値は2.0です。東京に限って言えば,B/A値は2.8です。

 これに,北海道,愛知,大阪,京都,兵庫,福岡の二府一道三県を加えると,全人口に占める割合(A)は55.9%,新規感染者総数に占める発生比(B)が82.2%で,B/A値は1.5になります。しかし,この二府一道三県は,全人口に占める割合(A)で見ると,27.6%で一都三県に匹敵しますが,発生比(B)では,26.8% (1,211人)で,B/A値は1.0 (小数点以下第二位で四捨五入)になります。

 12月31日の時点で見ると,第三波は,圧倒的に一都三県の「問題」であると言えますが,その中でも東京の「動揺」が大きく影響しています。

 一都三県から緊急事態宣言の発出が要請されたとのことですが,その必要性を考える前に,早急にすべきことが少なくとも三つあるように思います。

 一つは検査能力の平準化です。確定値の発表曜日ベースで見ると,日・月・火の三日間に「空白域」が生じるために,感染拡大の状況を正確に把握することが困難になっています。特に,感染爆発の予兆の感知を難しくしていることが,初動体制の遅れを生んでいるので,結果的に,感染拡大抑制にとっては大きくマイナスに働いています。

 もう一つは,東京の「異常値」が何に起因するのか原因を明確にすることです。論理的には,(イ)感染力の強い変異株が影響しているのか,(ロ)検査・防疫体制に穴が開いたのか,(ハ)その両方なのか,の三つの可能性が考えられます。10月以降のニュースを検索すると,東京では豊洲市場での感染が目を引きます。ここが検査・防疫体制の穴になった(ロ)のか,あるいは,そこからさらに感染力の強い変異株を生んだ(ロ+ハ)のか,調査が必要に思います。東京以外では「異常値」が見つかっていないので,国外から入った感染力の強い変異株が拡大を引き起こした(イ)とも考えられます。

 原因に応じて,対策は,東京限定になるのか,日本全体に及ぶのか変わってくるので,原因の特定が急がれます。

 最後は,病床が逼迫する理由を国民に正しく説明することです。

   実は,日本を含む西太平洋地域は,最も感染者数が少ないのです。

 

(2)

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(「新型コロナウイルス感染症まとめYahoo! Japan)

 

    (2)を基に計算してみます(12月24日時点)。累計感染者総数に占める西太平洋地域を「1」とすると,次のようになります。

 

(3)

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 見方を変えれば,西太平洋地域は,世界全体の1/75を占めるに過ぎないのです。感染者数が圧倒的に少ない地域にあって,なぜ日本は病床が逼迫するのでしょうか?

    (4)は,第三波で起きていると考えられる3つの小波を放物線で近似したものです(注1)。

 

(4)

 

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 12月31日のデータを反映した第三波Cは,前回の(1)のグラフに比べて,高さが増した分,落下位置が早くなっています。2,500人になるのは,5日早くなって1月25日です。

 しかし,現状では,早くても1月14日・15日・16日の数値を見るまでは,日本がどのような状況に直面しているのか分かりません。

 1月15日の時点で,新規感染者数が4,000人であれば,東京の「動揺」を日本全体では吸収が完了し,着実に下降局面に移行していると考えることができるでしょう。

 仮に,1月14日の時点で,新規感染者数が最大で9,042人程度に達していたとしたらどうでしょうか? 12月31日を起点に,新たな拡大局面に入ったとしても,二週間で二倍の範囲であれば,感染状況を十分に制御できていると考えることができます。

 

(5)

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 (T. Leslie et al., “What we can learn from the countries winning the coronavirus fight ”The ABC First published Mar. 26, 2020)

 

 第一波では,指数関数的に上昇したのは最初の三週間弱で,その期間,一週間に二倍の勢いで増加するというペースでした。国際的に見れば,感染拡大をうまく制御できている状況にありました。

 二週間で二倍という増加率は,第一波の「急拡大」より緩やかなので,1月14日の時点で9,042人を下回っていれば,第三波で猛威を振るっている新型コロナウイルスに対して,日本は優位に戦っていると考えることができます。

 問題は,9,042人を上回る場合です。

 

  1. Yahoo! Japanの発生状況を表したグラフと放物線のグラフの比率が,時間の経過と共に変わってきているので,時間を遡って放物線を描き直すと,過去に2つを重ね合わせた画像と一致しない。ここでは,1月1日の時点で,A, B, Cの波を近似し直している。