現代英語の文法を探求する

英語学とその隣接領域に関する見解を個人の立場で記述しています。

グラフから見える新型コロナウイルス第三波の拡大状況(3)

  1. はじめに

 緊急事態宣言にはどれほどの効果があるのでしょうか?

   日本型の戦いは,オーバーシュートを経験する場合と比べて,ピークが低くなる代わりに,落下(終息)点までの時間が長くなるのが特徴です。現状でも,どこかでピークに到達しては,終息に向かうはずですが,今回の緊急事態宣言は,これと比べてどれほどの効果があるのでしょうか?

 後日の検証に備えて,分科会は,(a)ピークがいつで,(b)その時の最大感染者数がいくらで,(c)Stage 2に到達するまでの期間がどれだけで,(d)感染者総数がいくらになるのか,(e)費用対効果はどうなるのか,宣言を発出した場合と,現状のまま発出しない場合とで,予測値を国民に対して明確に示すべきだと思います。

  第一波の時に戻ってみましょう。

 

(1)

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 緊急事態宣言が発出されて二週間後に,劇的にカーブが低下しているでしょうか?

  グラフを見る限りでは,何の効果も現れていません。50兆円近くの「真水」はいったい何のために使われたのでしょうか?

  私たちは,第一波から本当は何を学ぶべきだったのでしょうか?

  私たちの国が現在直面する最大の不幸は,国民にとって真に有益な政策を政権に助言できる専門家・機関が存在しないことのように思われます。

 新たな「真水」は国債ではなく,恩恵を直接的に享受する(はずの)今の世代で償還すべきです。財源は,国民等しく負担するとすれば,消費税の増税以外にありません。新たな「真水」と引き換えに,仮に3%~5%の増税を覚悟しなければならないとでも国から提案されたならば,それでも,国民は,緊急事態宣言の発出を望んだでしょうか?

  日本医師会は「我慢の三連休」を呼びかけました。確定値ベースで,もっとも数値が高い土曜日で比べると,連休初日の11月21日の新規感染者数は2,591人でした。二週間後の12月5日は2,504人で,むしろ,若干少なくなっています。「今日の行動が二週間後の感染抑制につながる」というのは,科学的に正しかったのでしょうか?

 (1)が示しているのは,むしろ,波がいったん打ち出された後では,社会・経済活動を抑制しても効果がないことだと見るべきでしょう。補足すれば,打ち出し時点では,検査・防疫体制や人々の行動様式は「定数」化していて,その後に一定の水準を下回らない限りは,打ち出された波の「勢い」に従ってカーブを描く,と仮定することができます。

 簡単に言えば,(1)の二つの波は,ウイルスそのものの感染力の強さを表していると見ることができます。

 

  1. すでに第四波が現れているのではないか?

  (1)に戻って二つの波を見比べると,第二波は,ピーク時の新規感染者が第一波の二倍,感染者総数は四倍です。すでに感染力は強くなっていたと考えられます。

 このままの推移で続くと仮定した場合,ピーク時の新規感染者数は,1, 2, 4, 8, 16,…,つまり,2n (nは0以上の整数)で増えることが考えられます。これに対して,感染者総数は,1, 4, 9, 16, 25, …, つまり,m2 (mは1以上の整数)で増えることが考えられます。

 端数処理(rounding)をすると,ピーク時の新規感染者数は800×2n (単位は「人」),感染者総数は2m2 (単位は「万人」)となります。

 波の周期をピークから算出すると,四か月です。11月5日頃から増加の勢いが見られるので,ここを第三波の始まりと仮定すると,第一波が3月~6月,第二波が7月~10月,第三波が11月~2月で(それぞれの波の2ヶ月目の上旬にピークが来る)と予測できます。

 以上をまとめたのが(2)です。

 

(2)

 

ピーク時の新規感染者数

総感染者数

期間

第一波

  800人

  2万人

  3月~6月

第二波

 1,600人

  8万人

  7月~10月

第三波

 3,200人

 18万人

 11月~20212月

第四波

 6,400人

 32万人

   3月~6月

 

 第三波Aと第三波Bで「一つの波」と仮定すると,12月に総感染者数が19万人に達したこととあわせて,12月の中旬までは,(2)の予測と整合する形で状況が推移していたと考えられます(「低い山」に視点をおくと二つの「高い山」は「一つの波」と仮定できますが,この点は省略します)。

   2021年1月6日現在で,累計感染者数が259,495人,内,東京が66,343人なので,東京の占める割合は,25.6% (B/A値は2.4)になります。この25.6%を使って,日本全体の感染者数を逆算してみます。12月31日,東京が1,337人なので,日本全体では,5,223人(実数,4,521人)になります。1月6日は参考値として使うと,東京が1,591人なので,日本全体では,6,215人 (実数,6,003人)になります。

  すると,第四波が一足早く到来し,12月~20213月の期間,影響が続くものと予測することもできます。あくまで仮説ですが,期間を別にして,基本的に(2)のパターンで推移しているのであれば,今度こそピークアウトが近いのではないかと思われます。

 ただし,病床は逼迫する可能性が極めて高いと思われます。

 

(3) 「重症者、死者の割合は?」の回答は、感染が再拡大した六月以降の数値で、重症化率1・62%(一〜四月は9・8%)、致死率0・96%(同5・62%)。

(「「感染させる人は2割以下」 厚労省が「コロナ10の知識」東京新聞. 2020年11月7日)

 

 第二波以降,重症化率が0.17倍 (=1.62/9.8)で変化がないとすると,第一波~第四波の総感染者数の比は1:4:9:16ですが,重症化率で見ると,1: 0.68 :1.53 :2.72で推移し,第四波は第三波の1.8倍になります。

 仮に(2)が基本的に正しいとすると,感染力自体が,波が打ち出される度に強くなっているので,個人や飲食店に感染拡大の防御のすべてを期待するのには無理があります。

 例えば,接触確認アプリを本格的に運用すれば,無症状感染者が飲食の場で感染を広げる可能性を抑制できるだけでなく,保健所の人海戦術に代わって,AIによって無症状感染者の洗い出しを効果的に行えることが期待できます。仮に,東京で,10日間で13,500人の陽性者が出たとします。無症状感染者の割合は分かりませんが,これも10倍と仮定すると,都内では,100人に1人が無症状感染者となります。均等に分布していると仮定すると,ある飲食店に100人の客がいれば,1人の無症状感染者がいるわけです。この1人を隔離できれば,感染は起こらないし,後から感染者であることが分かったとしても,店内のどの人に検査を受けてもらえばよいのか,人の記憶に頼らなくても,AIが瞬時に判断してくれるので,迅速に対応ができることになります。現在の状況は,この1人の無症状感染者を探すことをしないで,どういうわけか,残りの99人の行動を一律に抑制しようとしています。

 なんだかひどく無駄なことに時間とお金と労力を使っているように見えます。

   新規感染者数がどこで頭打ちになるのか[=ピークがどこか]正直分からないので,誰もが不安を感じます。数字も6,000人台に乗ると,未経験の領域に足を踏み入れるので,恐怖を感じて当然だと思いますが,だからこそ,今は冷静になることが大切です。

 指数関数的増加は,y=a(xの単位は一日)で表されますが,こうした増加は第一波を見ても分かる通り,長くは続きません。aが1.049~1.1 (つまり,倍加日数が14日~7日)に収まる限り,世界的な視野では,新型コロナウイルスを制御できていると見ることができます。

 むしろ,一都三県では,通常医療から独立したコロナ専門の治療体制を迅速に準備すると同時に,無症状感染者の効率的な隔離を進めることを方針に,社会・経済活動はできるだけ「平時」に近い状態を実現する方向が望ましいのではないかと思います。