グラフから見える新型コロナウイルス第三波の拡大状況(6)
1. はじめに
落ち着いて生活と仕事ができることを願っているのですが,世の中の方向が大丈夫なのかと不安が募ります。不安は容易に人の心を支配します。確かに,最悪の事態を想定することは重要です。しかし,それがどの程度現実的なのか裏付けや吟味もない状況で,社会的に影響力のある人々に,新型コロナウイルスの動向について,不安を煽るかのような言動が多くみられることを危惧しています。
言動の背後に,責任転嫁や保身の意図が隠れていないか,私たちは注意深く見守る必要があるかもしれません。
2. ピークアウトしたのか?
国内の発生状況(Yahoo! JAPAN提供)を参照すると,続落傾向が安定して続いている(特に,伸びが大きい土曜日の新規感染者数が減少し,「増加パターン」に変容が見られる)ので,1月8日(新規感染者7,787人)を境に,ようやく自然減の方向に向かっている可能性が考えられます。
二度目の緊急事態宣言が効力を発揮する1月8日を起点に考えると,1月22日(新規感染者数5,045人)に二週間目を迎えました。
現状の分析と将来予測(できれば,年当初に新規感染者数が突発的に急拡大したメカニズムについての科学的説明)が分科会から発表されなかったことに,落胆する国民は多かったのではないでしょうか?
(1)は第二波の上に第一波を重ねたものです(第一波は,縦と横をそれぞれ2倍に引き伸ばしている)。
(1)
二つの波が重なっているところでは色が濃く出ていますが,第一波と第二波のピークアウト後の減少傾向についてどう思われるでしょうか? グラフは,ピークを過ぎた後では,社会的・経済的活動を特に抑制しなくても,新規感染者数が自然に減少することを示しています。
分科会からピークアウトの宣言がいつ出るのか待たれるところです。
3. すでに第四波が始まっているのか?
今度は,第三波に第二波を重ねた(2)を見てみてください(第二波の縦と横をそれぞれ,1.5倍に引き伸ばした後で,ピーク時の新規感染者数の値が3,200に近くなるように,高さを2倍に調整している)。
(2)
ここでは,12月23日頃を境に新しい波(ここで言う第四波)が現れていると考えられます。この波は,遺伝子の変異に起因する新しい波である可能性が考えられます。感染研の解析ではどうなっているのか情報が待たれるところです。
4. 今後の発生を楽観的に予測すれば?
昨年末の数値の動向には,今年当初の「跳ね上がり」を示す兆しが見当たらないので,「未来の下りカーブ」を予測するのではなく,逆に,存在していたかもしれない「過去の上りカーブ」を想像しながら,今後の発生を楽観的に予測してみたいと思います。
(3)
赤の急な山は,1月初旬の数値を「一つの波」の一部であると解釈したものです。青の緩やかな山は,「二つの波」が合成されたものの一部であると解釈したものです。(2)を見ると,先行してピークが3,200の山が現れていることを踏まえ,その山の一部に6,400 (=800×23)の山が被さったものと仮定し,グラフ上では痕跡が見えないのですが,後者の山を想像で補って描いたものです。頂点は赤の山に合わせています((2)では,弧の開き具合を決めるために,頂点は1月8日に仮置きしてある。ピーク時をやや遅らせて仮定したless optimisticな弧が赤で描いた山である)。
5. 医療体制の脆弱さ
先週の木・金・土の3日間の超過率を見てみましょう。これは,人口比率と比べて発生比率がどれだけ大きいかを指標にしたものです。
(4) 超過率
(80≦早期警戒水域<120 120≦警戒水域<200 200≦危険水域)
1月21日 (5,652) |
1月22日 (5,043) |
1月23日 (4,717) |
||||||
1 |
241 |
東京 (10.8) |
1 |
216 |
東京 (10.8) |
1 |
210 |
東京 (10.8) |
2 |
179 |
神奈川 (7.2) |
2 |
186 |
千葉 (4.9) |
2 |
178 |
千葉 (4.9) |
3 |
173 |
千葉 (4.9) |
3 |
182 |
沖縄 |
3 |
159 |
大阪 (7.0) |
4 |
133 |
埼玉 (5.8) |
4 |
172 |
神奈川 (7.2) |
4 |
155 |
沖縄 |
5 |
127 |
大阪 (7.0) |
5 |
130 |
兵庫 |
5 |
153 |
神奈川 (7.2) |
6 |
125 |
福岡 (4.0) |
6 |
127 |
大阪 (7.0) |
6 |
124 |
京都 |
7 |
119 |
京都 |
7 |
124 |
京都 |
7 |
122 |
茨城 |
8 |
109 |
沖縄 |
8 |
122 |
埼玉 (5.8) |
8 |
119 |
埼玉 (5.8) |
9 |
98 |
兵庫 |
9 |
115 |
福岡 (4.0) |
9 |
113 |
福岡 (4.0) |
10 |
81 |
愛知 |
10 |
83 |
愛知 |
10 |
112 |
兵庫 |
11 |
80 |
群馬 |
11 |
|
|
11 |
100 |
山口 |
12 |
|
|
12 |
|
|
12 |
88 |
愛知 |
相変わらず東京だけが別格で,2倍以上の発生状況が続いています。
第三波を東京との「共振関係」で見ると,東京圏では千葉,関西圏では京都,その他の全国的な視点では,福岡,沖縄が,北海道,愛知より時間的に遅れて拡大することにも気がつきます。
大阪は兵庫・京都と一緒に宣言の要請を行っているので,二府一県を一つの「行政単位」として考えてみた場合にどうなるのかも見ておきましょう(都道府県名の後の数値は人口比率,超過指数の下の数値は発生比率を表す)。
(5) 超過指数(2)
|
1/21 |
1/22 |
1/23 |
|
1/21 |
1/22 |
1/23 |
東京 (28.7) 神奈川 埼玉 千葉 |
192 (55.2) |
186 (52.0) |
172 (49.3) |
大阪 (13.4) 兵庫 京都 |
116 (15.5)
|
128 (17.1)
|
138 (18.5)
|
神奈川 (17.9) 埼玉 千葉 |
163 (29.1)
|
160 (28.7) |
149 (26.7) |
宣言を要請する基準を超過指数に基づくと仮定した場合,どの程度が妥当でしょうか?
進化の仮説の一つに赤の女王仮説というものがあります。この仮説の基になった赤の女王のセリフが(6)です。
(6) (In Lewis Carroll’s Through the Looking Glass, the Red Queen tells Alice,)
“It takes all the running you can do, to keep in the same place.”
このアイデアを拝借して,新型コロナウイルスと戦う自治体に応用してみたらどうなるでしょうか?
第一波,第二波,第三波,そして,ここで言う第四波と,ステージが上がるたびに,走る速さ(=感染力)は増していきます。第三波まではなんとかステージに合わせて早く走り続ける(=医療体制を維持する)ことができたが,第四波ともなると,体力の格差(=医療体制の強靭・脆弱さの差)が現れて,スピードについていけない自治体が出てきた,という「見立て」で,現在の状況を見るとどうなるでしょうか?
超過指数が200を超えるか,あるいは,少なくとも,150以上で推移するような場合には,宣言の要請があるかもしれないとは思っていただけに,大阪の早期の「陥落」は予想外でしたが,超過指数80以下の自治体ではどうでしょうか?
(7)は超過指数80以下のクラスで上位に入る道県をピックアップしたものです(すべての都道府県について指数を算出していないので,漏れている県があるかもしれません)。
(7) 超過指数(番外編)
1 |
63 |
岐阜 |
1 |
73 |
群馬 |
1 |
69 |
北海道 |
2 |
60 |
栃木 |
1 |
73 |
栃木 |
2 |
57 |
熊本 |
3 |
55 |
北海道 |
3 |
56 |
岐阜 |
3 |
56 |
岐阜 |
4 |
50 |
熊本 |
4 |
52 |
北海道 |
4 |
53 |
群馬 |
5 |
38 |
静岡 |
5 |
41 |
静岡 |
4 |
53 |
栃木 |
6 |
23 |
広島 |
5 |
41 |
広島 |
6 |
38 |
静岡 |
|
|
|
7 |
36 |
熊本 |
7 |
23 |
広島 |
岐阜と栃木が宣言を要請し,現在,宣言下にあります。しかし,超過指数を基準に見ると,どうやら,ここで言う第四波により,医療体制の脆弱な自治体が浮かび上がってきたようです。宣言の発令は,さらに影響が多方面に波及し,二次試験に当たる個別入試を取りやめる大学まで現れました。
しかし,自治体だけを責めるわけにはいかないでしょう。そもそも,通常医療から独立したコロナ専門病棟とその運営スタッフを確保することは,本来,分科会,医師会,感染症学会(そして,学術会議)が政府に提言すべきことでした。少なくとも,第二波が沈静化した時期には,感染力のさらに強い第三波(以降)に備えて,人の命(と畢竟,経済の命)を守るために,非常時を想定した医療強化策を講じておくべきで,それがなされていたら,宣言は,発令されたとしても,東京に限定するような局地的な段階にとどまり(個別入試も予定通りに実施できた)のではないでしょうか?
「第四波」は,医療のひっ迫というのが,実は,人災ではないかという視点で検証することが必要であることを私たちに教えてくれているのではないかと思います。
グラフから見える新型コロナウイルス第三波の拡大状況(5)
- はじめに
グラフの情報を基に,放物線を使って,発生を近似予測すると,日本は波状攻撃を受けています。何度となく下りカーブが出現するのですが,その度に,高さが前とほぼ等しい波が打ち出されます。昨年12月も下旬に入ると,以前と違って,今度は,グラフに予兆がまったく見られない高い波が現れるようになります。
それでも日本は修復基調にあるのか,それとも,その網を突き破る勢いの強い波が現れたのか,2つの可能性に的を絞って予測したのが前回のブログの(1)の波形です(参考までに以下に再掲します)。
(1)
1月14日~1月16日の数値は,予測よりかなり低いものでした。過去の経験に照らして考えると,数値が十分に上がりきらない「足踏み」状態が続く場合,一週間~二週間後に再び,別の波の上昇カーブが現れます。
波状攻撃を受けていても,高い山の高さがほぼ等しい場合には,低い山は一定のカーブを描きます。前回の予測では,1月18日付近は4,000人でピークに達しますが,この結果がどうなるのかも一つの指標になるでしょう。
現時点では,一週間後の数値を見て,1月7日~1月9日の数値が,一種の巨大波(ピークが3,200×(2+α)),7,200の波(800×32),9,600の波(3,200+6,400 or 800×12),その他,のどの波の一部なのか,様子を見守りたいと思います。
- 爆発的な感染拡大?
専門家会議による「感染状況のステージ」の設定が正しかったのか検証することもなく第三波に突入しました。「爆発的な感染拡大」を,指数関数的増加に視点を置くと,まったく違った状況が現れます。第三波の開始を11月5日(新規感染者数1,050人)と仮定すると,二週間後の11月19日は,新規感染者数が2,386人です。ほぼ,二週間に二倍の速度で増加しています(が,放物線で近似してみるとわかりますが,直後に増加が鈍くなり,いったん下降局面に入ります)。y=axの式で考えれば,a=1.049です。12月の後半以降には,ここで第四波と呼ぶ波が現れますが,今年に入っても,指数関数的増加が続く期間の数値はa=1.049で安定しています。
第一波に比べて,感染力自体は強くなっているので,新規感染者数が増大していますが,「指数関数的増加」に限ってみると,第一波より遅い速度で増加しています。つまり,日本は,オーバーシュートを回避しつつ,今回もまた,新型コロナウイルスに対して依然として優位に戦いを進めているのです。
- 超過指数から日本の発生状況を見ると
B/A値を100倍したものを超過指数と呼ぶことにします。日本全体に占める新規発生比率(B)を,日本全体に占める人口比率(A)で割ったものに100を掛けた数字です(小数点以下を四捨五入します)。100は,発生比率が人口比率と同一になる場合で,100を超えれば,人口比率に対して発生比率が大きいことを,逆に,100を下回れば,人口比率に対して発生比率が小さいことを表します。
超過指数は日々変動しますが,各自治体の置かれた状況(や,防疫・検査体制の強靭さ)を判断することができます。(2)は,本年1月15日における47都道府県の超過指数を一覧にまとめたものです(一部の都府県の後の数字は,人口比率を示す)。
(2) 超過指数
(80≦早期警戒水域<120 120≦警戒水域<200 200≦危険水域)
1 |
260 |
東京 (10.8) |
13 |
79 |
熊本 |
23 |
45 |
長崎 |
37 |
22 |
大分 |
2 |
169 |
神奈川 (7.2) |
14 |
73 |
群馬 |
26 |
43 |
三重 |
38 |
20 |
青森 |
3 |
145 |
千葉 (4.9) |
15 |
71 |
佐賀 |
27 |
39 |
宮城 |
38 |
20 |
島根 |
4 |
128 |
福岡 (4.0) |
16 |
69 |
岐阜 |
28 |
33 |
福島 |
40 |
18 |
和歌山 |
5 |
119 |
埼玉 (5.8) |
17 |
67 |
北海道 |
28 |
33 |
石川 |
41 |
17 |
高知 |
6 |
114 |
大阪 (7.0) |
17 |
67 |
福井 |
28 |
33 |
山梨 |
42 |
16 |
富山 |
7 |
96 |
茨城 |
17 |
67 |
宮崎 |
28 |
33 |
岡山 |
43 |
15 |
鹿児島 |
8 |
91 |
兵庫 |
20 |
63 |
香川 |
28 |
33 |
広島 |
44 |
13 |
秋田 |
8 |
91 |
沖縄 |
21 |
55 |
奈良 |
28 |
33 |
徳島 |
45 |
11 |
山形 |
10 |
87 |
栃木 |
22 |
50 |
長野 |
34 |
27 |
山口 |
45 |
11 |
新潟 |
11 |
83 |
愛知 |
23 |
45 |
静岡 |
34 |
27 |
愛媛 |
47 |
10 |
岩手 |
12 |
81 |
京都 |
23 |
45 |
滋賀 |
36 |
25 |
|
|
|
(2)を見ればわかる通り,第三波(以降)は「圧倒的に東京の問題」です。ウイルスは人と共に動くから人の流れを止める必要があるというのであれば,東京を「封鎖」すれば簡単に済む話です。東京に人が一人も入ることがなく,一人も出ることがない状況を完全に実施できれば,東京以外では,時短,夜間や休日・祝日の外出自粛,テレワーク等の要請をしなくても,終息に向かって問題を解決できるはずです。
もっと正確に言えば,東京から「ウイルスを運び出す人」を正しく検知し,隔離すれば,東京以外は普通の生活に早く戻ることができるはずです。
東京の突出ぶりは,(3)を見るとさらに一層はっきりとします(1/14は,実数のデータを保存していなかったので計算から省いている)。
(3) 東京と「同程度の都市圏」と見立てた場合との比較
|
1/15 |
1/16 |
|
1/15 |
1/16 |
東京 (10.8) |
260 |
239 |
大阪 (13.4) 兵庫 京都 |
101 |
110 |
神奈川 (13.0) 埼玉 |
147 |
155 |
|||
千葉 (10.8) 愛知 |
111 |
109 |
|||
埼玉 (10.7) 千葉 |
130 |
145 |
|||
埼玉 (10.0) 北海道 |
97 |
110 |
単に大都市というだけではなく,東京に特有の何らかの事情が感染拡大の決定的な要因になっていると思われます。それを見つけることが東京の感染終息の鍵になるでしょう。手始めに,東京から北海道,愛知,大阪に行くと,東京で見慣れた「場所」があるが,岩手,新潟,鹿児島,高知,和歌山,島根に行くと,それがないか,ないに等しいものを探してみてはどうでしょうか?
グラフから見える新型コロナウイルス第三波の拡大状況(4)
- はじめに
1月7日~1月9日の数値は,個人的には,参考値であると考えていますが,以下では,検査能力が通常の水準に回復していると仮定して,『第四波』の拡大を予測してみたいと思います。
1月9日時点の予測では,ピークは1月15日~1月18日で,ピーク時の新規感染者数は,8,340人~8,840人となる可能性があります。
(1) 第四波の拡大予測 (1月9日の時点)
緊急事態宣言発出2週間後の1月21日では,新規感染者数は,8,000人~8,670人,宣言終了予定日の2月7日では,3,600人と予測されます。左右対称の正規分布図をイメージすると,この前後から「裾野」の領域に入るので,減少が鈍化することが予測されます。仮に(1)の予測通りに,状況が推移した場合,宣言は予定通り2月7日で解除し,「戦術」を一新して終息を図るのが賢明であるように思います。
グラフを基に発生状況を放物線で近似を繰り返すと,12月17日が分岐点と考えられますが,これ以降,12月24日に初めて確認できる波形を,ここでは第四波と呼ぶことにします。
(1)の二つの高い山のうち,稜線が緩やかな山(青で表示)は,この12月24日と最も勢いのある1月8日を通過するカーブです。比較的急な山(赤で表示)は,当初の第三波Cで「吸収」できない特異点となる12月31日と1月8日を通過するカーブです。前者の青い山は,12月24日に顕在化した震源地東京の「動揺」を,日本が一つの系(a system)として,修復する過程にあると解釈したものです。
月曜日の「伸びの底」を通過するカーブは,12月21日まではa=2/25で近似できていたのですが,12月28日には,予想を500人ほど上回ってしまいます。この12月28日と1月4日を通過するカーブをa=1/5で予測すると,高い山にやや遅れながらも,1月18日には,震源地の動揺を完全に吸収できる見込みです。
- 指数関数的増加が止まる
1月7日~1月9日の数値が信頼でき,防疫・検査体制にcrack (亀裂)が発生していない,かつ,感染力のさらに強い変異株が存在しない,と仮定した場合,確定値ベース(=見た目の増減グラフ)では,1月15日~1月18日以降は,自然減の方向に向かうのではないかと期待されます。
根拠としては,東京と日本の指数関数的増加がようやく止んだと考えられるからです。
増加の起点をどこに取るのかという難しい問題がありますが,東京の起点は,グラフ上で検知できる特異点の12月17日を選ぶことにします。東京は二週間で二倍の速度で増加していると仮定すると,この日,東京は882人の新規感染者が出ました。二週間後の12月31日には,1,764人 (実数は1,337人)と予測されます。この1,764人を起点に,1.049を1日毎に掛けていきます(指数関数的増加はy=axで表されますが,二週間で二倍の増加はa=1.049となります)。
これを表にまとめたのが(2)です(括弧内は確定値-とは言え,過去に遡ると,ときどき,数値が微妙に変化しています)。
(2)
1日 |
2日 |
3日 |
4日 |
5日 |
6日 |
7日 |
8日 |
9日 |
1,850人 |
1,941人 |
2,036人 |
2,136人 |
2,241人 |
2,350人 |
2,466人 (2,447) |
2,586人 |
2,713人 |
実数では,1月7日を境に予測を下回るので,東京もようやく下降局面に入った可能性を想定できます。
日本全体では,もう一つの特異点である12月24日を基準に考えてみます。この日の新規感染者数は,3,738人です。日本全体でも二週間で二倍の速度で増加していると考えると,二週間後の1月7日は,7,476人 (実数は7,571人)です。同様に,計算した結果を示したのが(3)です(括弧内は『確定値』)。
(3)
1日 |
2日 |
3日 |
4日 |
5日 |
6日 |
7日 |
8日 |
9日 |
|
|
|
|
|
|
7,476人 (7,571) |
7,842人 (7,882) |
8,227人 (7,789) |
日本全体で見ても,前提に変化がなければ,増加のスピードが鈍化し始めていると見ることができるので,ピークは間もなく来ると予想できます。
前回,累積感染者数に占める東京の割合が25.6%であることを見ました。1月7日の東京の2,447人(予測値2,466人)から,日本全体の総数を逆算で推計すると,9,559人(予測値ベースでは,9,633人)です。これは,東京とリアルタイムで連動して変化した場合の数値ですが,すでに東京は下降局面に入っていると仮定して正しい場合,隣接する三県も同様に推移すると考えられるので,1月14日~1月16日の「高い山」の稜線では,この数値を下回っているはずです。仮に(1)の仮説が正しいとすれば,8,340人~8,840人の範囲内に収まっていれば,危機的な状況が最終的に回避されたと推定できます。
第一波と第二波は,グラフで見ると正規分布を描いています。両端の「裾野」の部分を切り取って,中央の部分をy=-ax2の放物線の波形で,ピークを推定できないかというのが今回の考察の前提にあるideaです。
台風が近づくときと遠ざかるときとでは,緊張が続きますが,対応は変わります。同様に,新型コロナウイルスのピークを予測できれば,国民も何をどのように行動すればよいのか予見ができるようになるはずです。端的に言えば,危機の中にあっても,安心して[=良識を持って]行動できるはずです。
二府一県(大阪,京都,兵庫)は,震源地の影響を受けて厳しい状況にあると思います。しかし,二府一道三県(北海道,愛知,大阪,京都,兵庫,福岡)の括りで見ると,1月9日現在,新規感染者数は2,002人で,国内総数(7,789人)に占める割合(B)は26.0% (小数点以下第二位を四捨五入)です。全人口に占める割合(A)は27.6%なので,B/A値は0.9です。
これに対して,東京は,新規感染者数に占める割合が29%,B/A値は2.7です。一都三県に拡大すると,新規感染者数に占める割合は54.7%,B/A値は1.9になります。
「非常時」の病床対策に問題があったとは言え,二府一県は非常に苦しい状況の中で,驚嘆的な努力を継続しています。ここで選択を誤れば,緊急事態宣言は一気に全国に波及し,第一波と同じ轍を踏む危険性があります。二府一県には,阪大,京大をはじめ日本を代表する研究機関があります。智慧を結集し,状況を冷静に分析・判断することを切望します。
グラフから見える新型コロナウイルス第三波の拡大状況(3)
- はじめに
緊急事態宣言にはどれほどの効果があるのでしょうか?
日本型の戦いは,オーバーシュートを経験する場合と比べて,ピークが低くなる代わりに,落下(終息)点までの時間が長くなるのが特徴です。現状でも,どこかでピークに到達しては,終息に向かうはずですが,今回の緊急事態宣言は,これと比べてどれほどの効果があるのでしょうか?
後日の検証に備えて,分科会は,(a)ピークがいつで,(b)その時の最大感染者数がいくらで,(c)Stage 2に到達するまでの期間がどれだけで,(d)感染者総数がいくらになるのか,(e)費用対効果はどうなるのか,宣言を発出した場合と,現状のまま発出しない場合とで,予測値を国民に対して明確に示すべきだと思います。
第一波の時に戻ってみましょう。
(1)
緊急事態宣言が発出されて二週間後に,劇的にカーブが低下しているでしょうか?
グラフを見る限りでは,何の効果も現れていません。50兆円近くの「真水」はいったい何のために使われたのでしょうか?
私たちは,第一波から本当は何を学ぶべきだったのでしょうか?
私たちの国が現在直面する最大の不幸は,国民にとって真に有益な政策を政権に助言できる専門家・機関が存在しないことのように思われます。
新たな「真水」は国債ではなく,恩恵を直接的に享受する(はずの)今の世代で償還すべきです。財源は,国民等しく負担するとすれば,消費税の増税以外にありません。新たな「真水」と引き換えに,仮に3%~5%の増税を覚悟しなければならないとでも国から提案されたならば,それでも,国民は,緊急事態宣言の発出を望んだでしょうか?
日本医師会は「我慢の三連休」を呼びかけました。確定値ベースで,もっとも数値が高い土曜日で比べると,連休初日の11月21日の新規感染者数は2,591人でした。二週間後の12月5日は2,504人で,むしろ,若干少なくなっています。「今日の行動が二週間後の感染抑制につながる」というのは,科学的に正しかったのでしょうか?
(1)が示しているのは,むしろ,波がいったん打ち出された後では,社会・経済活動を抑制しても効果がないことだと見るべきでしょう。補足すれば,打ち出し時点では,検査・防疫体制や人々の行動様式は「定数」化していて,その後に一定の水準を下回らない限りは,打ち出された波の「勢い」に従ってカーブを描く,と仮定することができます。
簡単に言えば,(1)の二つの波は,ウイルスそのものの感染力の強さを表していると見ることができます。
- すでに第四波が現れているのではないか?
(1)に戻って二つの波を見比べると,第二波は,ピーク時の新規感染者が第一波の二倍,感染者総数は四倍です。すでに感染力は強くなっていたと考えられます。
このままの推移で続くと仮定した場合,ピーク時の新規感染者数は,1, 2, 4, 8, 16,…,つまり,2n (nは0以上の整数)で増えることが考えられます。これに対して,感染者総数は,1, 4, 9, 16, 25, …, つまり,m2 (mは1以上の整数)で増えることが考えられます。
端数処理(rounding)をすると,ピーク時の新規感染者数は800×2n (単位は「人」),感染者総数は2m2 (単位は「万人」)となります。
波の周期をピークから算出すると,四か月です。11月5日頃から増加の勢いが見られるので,ここを第三波の始まりと仮定すると,第一波が3月~6月,第二波が7月~10月,第三波が11月~2月で(それぞれの波の2ヶ月目の上旬にピークが来る)と予測できます。
以上をまとめたのが(2)です。
(2)
|
ピーク時の新規感染者数 |
総感染者数 |
期間 |
第一波 |
800人 |
2万人 |
3月~6月 |
第二波 |
1,600人 |
8万人 |
7月~10月 |
第三波 |
3,200人 |
18万人 |
11月~2021年2月 |
第四波 |
6,400人 |
32万人 |
3月~6月 |
第三波Aと第三波Bで「一つの波」と仮定すると,12月に総感染者数が19万人に達したこととあわせて,12月の中旬までは,(2)の予測と整合する形で状況が推移していたと考えられます(「低い山」に視点をおくと二つの「高い山」は「一つの波」と仮定できますが,この点は省略します)。
2021年1月6日現在で,累計感染者数が259,495人,内,東京が66,343人なので,東京の占める割合は,25.6% (B/A値は2.4)になります。この25.6%を使って,日本全体の感染者数を逆算してみます。12月31日,東京が1,337人なので,日本全体では,5,223人(実数,4,521人)になります。1月6日は参考値として使うと,東京が1,591人なので,日本全体では,6,215人 (実数,6,003人)になります。
すると,第四波が一足早く到来し,12月~2021年3月の期間,影響が続くものと予測することもできます。あくまで仮説ですが,期間を別にして,基本的に(2)のパターンで推移しているのであれば,今度こそピークアウトが近いのではないかと思われます。
ただし,病床は逼迫する可能性が極めて高いと思われます。
(3) 「重症者、死者の割合は?」の回答は、感染が再拡大した六月以降の数値で、重症化率1・62%(一〜四月は9・8%)、致死率0・96%(同5・62%)。
(「「感染させる人は2割以下」 厚労省が「コロナ10の知識」」東京新聞. 2020年11月7日)
第二波以降,重症化率が0.17倍 (=1.62/9.8)で変化がないとすると,第一波~第四波の総感染者数の比は1:4:9:16ですが,重症化率で見ると,1: 0.68 :1.53 :2.72で推移し,第四波は第三波の1.8倍になります。
仮に(2)が基本的に正しいとすると,感染力自体が,波が打ち出される度に強くなっているので,個人や飲食店に感染拡大の防御のすべてを期待するのには無理があります。
例えば,接触確認アプリを本格的に運用すれば,無症状感染者が飲食の場で感染を広げる可能性を抑制できるだけでなく,保健所の人海戦術に代わって,AIによって無症状感染者の洗い出しを効果的に行えることが期待できます。仮に,東京で,10日間で13,500人の陽性者が出たとします。無症状感染者の割合は分かりませんが,これも10倍と仮定すると,都内では,100人に1人が無症状感染者となります。均等に分布していると仮定すると,ある飲食店に100人の客がいれば,1人の無症状感染者がいるわけです。この1人を隔離できれば,感染は起こらないし,後から感染者であることが分かったとしても,店内のどの人に検査を受けてもらえばよいのか,人の記憶に頼らなくても,AIが瞬時に判断してくれるので,迅速に対応ができることになります。現在の状況は,この1人の無症状感染者を探すことをしないで,どういうわけか,残りの99人の行動を一律に抑制しようとしています。
なんだかひどく無駄なことに時間とお金と労力を使っているように見えます。
新規感染者数がどこで頭打ちになるのか[=ピークがどこか]正直分からないので,誰もが不安を感じます。数字も6,000人台に乗ると,未経験の領域に足を踏み入れるので,恐怖を感じて当然だと思いますが,だからこそ,今は冷静になることが大切です。
指数関数的増加は,y=ax (xの単位は一日)で表されますが,こうした増加は第一波を見ても分かる通り,長くは続きません。aが1.049~1.1 (つまり,倍加日数が14日~7日)に収まる限り,世界的な視野では,新型コロナウイルスを制御できていると見ることができます。
むしろ,一都三県では,通常医療から独立したコロナ専門の治療体制を迅速に準備すると同時に,無症状感染者の効率的な隔離を進めることを方針に,社会・経済活動はできるだけ「平時」に近い状態を実現する方向が望ましいのではないかと思います。
グラフから見える新型コロナウイルス第三波の拡大状況(2)
- はじめに
まず,2020年12月31日の発生状況を確認しておきましょう。
(1)
一都三県(東京,神奈川,埼玉,千葉)が全人口に占める割合(A)は28.3%ですが,新規感染者総数に占める発生比(B)が55.5%(2,507人)で, B/A値は2.0です。東京に限って言えば,B/A値は2.8です。
これに,北海道,愛知,大阪,京都,兵庫,福岡の二府一道三県を加えると,全人口に占める割合(A)は55.9%,新規感染者総数に占める発生比(B)が82.2%で,B/A値は1.5になります。しかし,この二府一道三県は,全人口に占める割合(A)で見ると,27.6%で一都三県に匹敵しますが,発生比(B)では,26.8% (1,211人)で,B/A値は1.0 (小数点以下第二位で四捨五入)になります。
12月31日の時点で見ると,第三波は,圧倒的に一都三県の「問題」であると言えますが,その中でも東京の「動揺」が大きく影響しています。
一都三県から緊急事態宣言の発出が要請されたとのことですが,その必要性を考える前に,早急にすべきことが少なくとも三つあるように思います。
一つは検査能力の平準化です。確定値の発表曜日ベースで見ると,日・月・火の三日間に「空白域」が生じるために,感染拡大の状況を正確に把握することが困難になっています。特に,感染爆発の予兆の感知を難しくしていることが,初動体制の遅れを生んでいるので,結果的に,感染拡大抑制にとっては大きくマイナスに働いています。
もう一つは,東京の「異常値」が何に起因するのか原因を明確にすることです。論理的には,(イ)感染力の強い変異株が影響しているのか,(ロ)検査・防疫体制に穴が開いたのか,(ハ)その両方なのか,の三つの可能性が考えられます。10月以降のニュースを検索すると,東京では豊洲市場での感染が目を引きます。ここが検査・防疫体制の穴になった(ロ)のか,あるいは,そこからさらに感染力の強い変異株を生んだ(ロ+ハ)のか,調査が必要に思います。東京以外では「異常値」が見つかっていないので,国外から入った感染力の強い変異株が拡大を引き起こした(イ)とも考えられます。
原因に応じて,対策は,東京限定になるのか,日本全体に及ぶのか変わってくるので,原因の特定が急がれます。
最後は,病床が逼迫する理由を国民に正しく説明することです。
実は,日本を含む西太平洋地域は,最も感染者数が少ないのです。
(2)
(「新型コロナウイルス感染症まとめ」Yahoo! Japan)
(2)を基に計算してみます(12月24日時点)。累計感染者総数に占める西太平洋地域を「1」とすると,次のようになります。
(3)
見方を変えれば,西太平洋地域は,世界全体の1/75を占めるに過ぎないのです。感染者数が圧倒的に少ない地域にあって,なぜ日本は病床が逼迫するのでしょうか?
(4)は,第三波で起きていると考えられる3つの小波を放物線で近似したものです(注1)。
(4)
12月31日のデータを反映した第三波Cは,前回の(1)のグラフに比べて,高さが増した分,落下位置が早くなっています。2,500人になるのは,5日早くなって1月25日です。
しかし,現状では,早くても1月14日・15日・16日の数値を見るまでは,日本がどのような状況に直面しているのか分かりません。
1月15日の時点で,新規感染者数が4,000人であれば,東京の「動揺」を日本全体では吸収が完了し,着実に下降局面に移行していると考えることができるでしょう。
仮に,1月14日の時点で,新規感染者数が最大で9,042人程度に達していたとしたらどうでしょうか? 12月31日を起点に,新たな拡大局面に入ったとしても,二週間で二倍の範囲であれば,感染状況を十分に制御できていると考えることができます。
(5)
(T. Leslie et al., “What we can learn from the countries winning the coronavirus fight ”The ABC First published Mar. 26, 2020)
第一波では,指数関数的に上昇したのは最初の三週間弱で,その期間,一週間に二倍の勢いで増加するというペースでした。国際的に見れば,感染拡大をうまく制御できている状況にありました。
二週間で二倍という増加率は,第一波の「急拡大」より緩やかなので,1月14日の時点で9,042人を下回っていれば,第三波で猛威を振るっている新型コロナウイルスに対して,日本は優位に戦っていると考えることができます。
問題は,9,042人を上回る場合です。
注
- Yahoo! Japanの発生状況を表したグラフと放物線のグラフの比率が,時間の経過と共に変わってきているので,時間を遡って放物線を描き直すと,過去に2つを重ね合わせた画像と一致しない。ここでは,1月1日の時点で,A, B, Cの波を近似し直している。
グラフから見える新型コロナウイルス第三波の拡大状況(1)
- はじめに
安心して仕事と生活ができる日常に一日でも早く戻ることを希求して,緊張感をもって感染対策に取り組んでいるにも関わらず,状況は一向に改善する兆しが見えません。なぜなのでしょうか? そもそも,私たちは今どのような状況に置かれているのでしょうか?
分科会,医師会,感染症学会が頼りにならないのであれば,答えを自分たちで探すしかありません。
Yahoo! Japan が「新型コロナウイルス感染症まとめ」で,新規感染者数を日別で表したグラフを提供しているので,このグラフを基に考えてみたいと思います。
- 第三波には3つの山がある-12月17日が分岐点
グラフを見ると,新規感染者数の発生に関して,伸びが顕著な「(水)木金土」,と伸びの底に当たる「月」の2つに分類できます。前者のデータから近似できるカーブを「高い山」,後者のデータから近似できるカーブを「低い山」と呼ぶことにします。
高い山に着目すると,第三波には,3つの山があります。順に,第三波A,第三波B,第三波Cとします。
直近の第三波Cの発生状況は,グラフから次のように予測できます(注1)。
(1) 第三波Cの発生状況の予測 (12月28日時点)
12月16日~12月19日の4日間は,土曜日に伸びの頂点が現れていないので,外側の12月16日・17日を通過する緩やかなカーブと,内側の12月18日・19日を通過する比較的急なカーブの2つで近似しています。近似に選んだ放物線はy=-ax2のタイプです。前者のカーブはa=9/25 ,後者のカーブはa=12/25 です。
Go To トラベルの一時停止が大きく話題に上るようになったのは12月11日です(例えば,「Go Toトラベル「ステージ3の一部で一時停止を」コロナ分科会が提言」(TOKYO Web. 12月11日)を参照のこと)。12月11日の新規感染者数が2,795人なので,これより少ない数で切りのいい数字を選ぶと,2,500人がGo To トラベル再開の一つの目安になるでしょう(注2)。
予測通りに状況が展開すると仮定して,この水準に達するのは,2021年1月30日です。また,Go To トラベルと感染拡大との因果関係は科学的に証明されていませんが,この関係を推認する社会的風潮があることも忘れてはいけません。
「先手」で考えるというのであれば,Go To トラベルの再開は東京オリンピック後に延期し,まずは,感染拡大のepicenterになっている東京の鎮火に「全集中」すべきでしょう。
実は,東京の新規感染者数が882人になった12月17日(総数3,210人)が分岐点で,12月23日までに限って見れば,仮想上のピークが12月22日に現れ,2021年1月9日頃までに(少なくとも)2,500人まで下がる最後の機会でした。
(2)
全国平均の2倍以上の感染状況が続く東京の「動揺」を,日本が一つの系(a system)として何とか吸収しようと最後の頑張りを見せていた時期と言うこともできるでしょう。
第三波Cの存在が顕在化するのは12月24日(3,739人)です。この時初めて,12月17日が異常値であることに気づかされます。しかし,新しい波の存在はすぐに3点以上を通過するカーブで近似し直すことができるのですが,12月24日の時点では,12月17日と12月24日の2点しかないという点でも異常な局面を迎えていました。
ここで,12月24日を例に取り,発生状況を確認してみましょう。便宜的に,人口の多い上位8つの都道府県から兵庫県を除く7つを選ぶことにします。
東京,神奈川,埼玉,千葉の一都三県が全人口に占める割合(A)は28.3%ですが,新規感染者総数に占める発生比(B)が50.0%(1,868人)で, 前者で後者を割ったB/A値は1.8です。東京に限って言えば,B/A値は2.2です(注3)。
(3)
時間が多少前後して,3日前の12月21日の発生状況に戻りますが,視覚に訴える日テレNEWS 24の報道は,さらに説得力があるでしょう(「赤で囲み表示」は筆者による)。
(4)
(「全国で1804人の感染確認 死者は48人」日テレNEWS 24. 12月22日 (注4))
これを見ると,東京が震源地で,神奈川,埼玉,千葉が防波堤として頑張っていることが分かります。交通機関が現在のように発達していない江戸時代以前であれば,感染はこの一都三県の局地的なものであったかもしれません。
東京オリンピックを軸に考えれば,訪日客が安心・安全に東京で開催されるオリンピックを楽しむことができるように準備を整えることが何よりの「おもてなし」であり,そこで信頼を獲得できれば,観光立国としての再出発も円滑に進むことでしょう。詰まるところ,経済の立て直しにも有効につながるでしょう。
そのためには,東京を居住地または勤務地とする人々にワクチンの接種を優先することが考えられますが,それ以上に,さらに感染力の強い変異株が生まれる芽を徹底的に摘むことが重要な鍵になるでしょう。こう考えた場合,東京に居住する人々に,昼間に東京に流入する隣県三県の学生・勤労者を対象に,PCR検査を徹底的に実施すべきだと思います。一日100万人を対象に,2週間程度の期間で,対象者のPCR検査を少なくとも2回実施し,無症状感染者の「クラスター」の可能性を示す地域または職場/職種を洗い出し,次に,特定の対象に絞って,さらに複数回PCR検査を実施するのです。
早期の治療開始により重症化を防ぎ,後遺症を軽減するという副次的効果も期待できますが,何よりも,第四波の発出を防ぐことが目的です。人間の体内で生存する限りにおいて,変異が可能であるのであれば,有症者は治療により,変異の芽は摘まれます。残る課題として,これまで軽視されてきた無症状者をターゲットに感染力を増す変異の芽を徹底的に摘むのです。
ことわざに,A chain is no stronger than its weakest link.とあるように,東京の中の潜在的なweakest linkを取り除くことこそが,新型コロナウイルスとの戦いに勝利を収める真の意味での「先手」となるはずです。
注
- 放物線の作成には,WinCATS放物線学習ツールを,画像の重ね合わせには,WEBブラウザ上で簡単に透過PNG画像を作成できるツールを利用している。ツールの作成者には,この場を借りて御礼申し上げます。
- 分科会が「観光支援策「Go To トラベル」キャンペーンでは、感染拡大地域から出発する旅行についても一時停止を検討するよう要請した(「感染拡大地域との往来自粛 尾身会長、東京23区「ステージ3」相当―コロナ分科会」JIJI. COM. 2020年11月26日)日の新規感染者数が2,500人です。
- 人口比は,2015年時点。ウィキペディア「都道府県の人口一覧」を参照している。
- 12月21日の一都三県の発生比は45.1% (814人),B/A値が1.6である。東京は,発生比が21.2%,B/A値が2.0である(新規感染者数は日テレの発表に基づく)。